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紅ノ蝶

紅ノ蝶

気になるあの子



〈気になるあの子〉


ある日の午後のことだった。

天気もよく、風紀委員長こと雲雀恭弥は屋上で昼寝をしているときだった。

「ったく、授業とかつまんねーぜ。」

悪態をつきながら、がたんとドアを蹴って屋上に入ってきたのは獄寺隼人だった。

愛用のたばこをくわえ寝転がろうとしたとき。


「ねえ、何してるの?」


頭上からの声に驚いて顔を上げると雲雀不機嫌そうにこちらを睨んでいた。


「なっ、テメー・・・。なんだよ。」

舌打ちをして獄寺は雲雀を睨みつけた。

「僕が聞いてるんだよ。それにしても、僕の前でサボりなんていい度胸だね。」

どこからともなくトンファーを出し構えた。

「テメー、やんのか?」

「咬み殺す・・・。」



雲雀の先生の攻撃を獄寺はとっさにかわした。

(ちっ、接近戦だと不利だぜ・・・。いったん距離をとるか。)

そう思い下がろうとしたときだった。


「君、女の子なのに何で男の振りしてるの?」

「な、何言ってんだ。俺は男だ!」

「・・・ふーん・・・。」

唐突な質問のおかげで獄寺は攻撃を避けるのが遅れた。

シュッという音が回りに響く。

獄寺の胸元にトンファーがかすったのだ。

ボタンが飛び、とっさに隠した。

「このヤロー・・・。」

獄寺は怒りの性か恥ずかしい性か、顔を赤くして雲雀をにらつけた。

「ほら、女だからそんなところ隠すんでしょ?」

雲雀はニヤリと口元を上げて笑っていた。

「テメーわざとやったな。」

肯定だといわんばかりの笑みを獄寺に見せた。

「くそっ・・・。」

その場を立ち去ろうとした獄寺の腕を引っ張り、上手に組み敷いた。

「どけ!」

「嫌だね。」

「どうしてわかったんだ・・・。」

悔しそうに顔を俯かせながら呟く。

「勘かな?初めて会ったときからかわいい子だなって思ってたし。」

「なっ・・・!」

かわいいという言葉に反応して、また顔が熱くなる。

「女子なら、これからはちゃんと女子用の制服を着てよね。」

「俺は男子としてこの学校に入ってんだ。だから女じゃねぇ。」

「ワォ、この状態で僕に楯突くとはいい度胸だね?獄寺隼人。」

にこっと微笑んではいるものの、その笑顔はとても黒かった。

その微笑みに獄寺は寒気が走った。

でも、こんなところで引く獄寺ではない。

「うるせー!いいから早くそこどけよ!!!」

雲雀は、じたばたして何とかそこから逃げようとする獄寺の腕を押さえつけひとつにまとめた。

「こ、このっ!離せ!!!早くどけって言ってっん!・・・っんん!!!」

「うるさいよ。」

そう一言言うと、しゃべりかけていた獄寺の口を己の口でふさいだ。

獄寺は必死に抵抗するが、女が男の力にかなう筈はなかった。

(やばっ・・・頭くらくらする・・・。)

酸素が恋しくなり、口をあけたその瞬間。

「ん・・・っっっ・・・んん・・・」

口内に雲雀の侵攻を許してしまった。

逃げようとする獄寺の舌を雲雀は簡単に絡めとってしまう。

最後にチュッとわざと聞こえるようなリップノイズをたてて、名残惜しそうに唇を離した。

「・・・テメー・・・何、しやがるんだ・・・。」

息を荒げ、顔を真っ赤にしながら雲雀を睨みつける。

「キスだけど?」

「なっ・・・!」

けろっとした態度で雲雀は答えた。

「獄寺隼人・・・。やっぱり君、かわいいね。あんな草食動物なんかやめて僕のところにおいでよ。」

「何言ってんだ、テメー・・・。」

「そのままの意味だよ。」

「・・・っ///!」

頬に軽く触れるだけのキスをして、真っ赤になる獄寺の顔を横目に屋上から去っていった。

雲雀が去った方を見つめながら、獄寺は今起こった出来事を整理し始めた。

(・・・何なんだよアイツ・・・。キス、初めてだったのに。)

思い出すと、顔がまたかあっと熱くなるのが自分でもわかった。

(俺、どうしちゃったんだろう・・・。)


そんな獄寺とは裏腹に空には何事もなかったかのように、授業修了のチャイムが鳴り響いていた。



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1007.2.26
初のヒバ獄!
微妙にキャラが違うのはスルーしてやってください。
アゲハの中のヒバ獄はこんな感じです。



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